丹後ブルー小林染工房小林知久佐展

丹後ブルー小林染工房　小林知久佐展2022/10/02

小林知久佐展

10月14日（金）～17日（月）4日間（最終日は15時半まで）
期間中　小林さん滞在
青山ゑり華　店内にて

丹後に凄い技術を持った染め師がいます。
きものサローネで知り合って、その技術の高さに惚れ込み何度もゑり華での個展を誘いました。
しかしなかなか色よい返事を貰えないまま、６年の月日が過ぎました。
ＳＮＳで消費者と直接繋がることが可能な現在、着物屋と付き合うことにメリットを感じて貰えなかったのかもしれません。
それでも、ゑり華にはＳＮＳをしないお客様がたくさんいらっしゃいます。
そんな方にも小林さんの染めた美しい着物を是非見て貰いたいと、何度も頼みました。
この度ゑり華で開催が決まり、小林さんの素晴らしい技術と彼が生み出す素晴らしい作品をゑり華のお客様にご紹介できることが嬉しくてたまりません。
是非お時間を作ってご来店ください。
よろしくお願いいたします。

店主花岡隆三

引き染めとは

染色工程の中でも最も基本的な技法「引き染め」刷毛を引くようにして染めるのでその名前です。
一般的に柄や模様ではなく、地色を染めるためのもの。
友禅や絞りなどに比べて注目されることが少ない技法です。

小林染工房にて引き染め体験しました

小林さんのたゆまぬ探究心と
修練を積んだ超絶技巧
意外に知られていない紹介したい工房です

なにより
新しい事に挑戦し作ることが好きなんです

「シケ刷毛」は「シケ引き」染め専用の平刷毛。
柄が長く刷毛は鹿の毛を使い櫛状に毛をそろえた特注品です。
毛の密度や厚み・握りの寸法など細かく注文を出し、刷毛は使い終えるとそのつど徹底的に水洗いして乾燥。
それでも残る染料が染め色を濁らせぬよう一つの色につき濃地用、中地用、薄地用と最低三種類は用意しています。

堅牢度が高く、扱いの難しい染料を使うのは着る人への心づかい。
濃淡で彩られた布の美しさはシンプルを極めているからこそ、時代を超えて魅了していく力があります。

「どうやったら最もきれいに染め上がるか、考えるのはそれだけ」
仕事中はホコリが舞うのを嫌って冷暖房の風があたらないよう工夫をしています。
卓越した技術はこうした繊細な気配りの上でこそ掃除の行き届いたきれいな染め場です。
年間の制作反数は少ない。丹後で食べていければいい、と、工程のほとんどをお一人でしています。

僕は、ぼかし染めが好きだから
染めが主役になる着物が作りたかったんです

【小林さん（以下敬省略）】僕はぼかし染めで力のある着物を作りたかった。
だいたいぼかし染めをしても「ほなここに刺繍をいれたらいいやん」とか、ほかの技法の背景にあるものとして扱われてきたんです。
僕はぼかし染めが好きだから、ぼかし染めが主役になる着物が作りたかったんです。

２０代後半は染め職人としてどさ回りして、まだスマホも宅急便もない時代にいろんなところで紹介や飛び込んで行ってはぼろくそに言われて。
そんな中で「ちょっとやってみるか」と言ってくれたところがあって、そこで糊伏せの友禅のぼかしを特選品まで任せてもらっていました。

【花岡】そもそも丹後ブルーを染め始めた理由は？

【小林】青は色が褪せやすいでしょう。堅牢度の高い青を染めてみないかと勧められて始めたんですけど、いや～難しかったです。
でも挑戦し続けて、きものサローネやキモノショーで人気が出て、丹後ブルーと言う名前はお客さんがつけてくれたんです。

【花岡】小林さんは丹後出身なのですか？

【小林】僕は丹後の人間じゃないんですよ。
前にいた会社が京都市内にあって、友禅から糸目置き、地染めなど一貫して作業できる工房があったのですが、そこが丹後の網野に工房を作ると言う話があって丹後に来ました。

その工房は今はもうなくなってしまったのですが、僕はここに残ったんです。
こっちで独立して自分の工房を構えようとして、すごい探して、みんなにお世話になって探して、それでもなくて、染色センターの「ここで観光客に染め体験をやってくれたら貸してあげる」という話もあったんだけど、それをしたら染色家としてどうだろうと考えたり、そうしているうちに、この場所に出会って。
ここはもともと西陣の帯を織っていた場所で、所々に織機の跡があるんです。
奥行きがあってちょうど一反張る長さがある！となってこの場所を買ったんです。
貯金１０万しかないときに…（笑）

【花岡】いろんな目に遭っているんですね

【小林】廃墟のようになっていたここを片付けて、嫁と二人で掃除して、西陣の機場だったんでほこりがすごくて、染めにはほこりが大敵なのでめちゃめちゃ大変でした。
この工房は全部僕が設計したんです。

【花岡】よくやってらっしゃるわ本当に

【小林】一昨年、借金を完済したんですよ。さあこれからや！と思ったらコロナ…
仕事がガーっと減って、でもまあええか～って。丹後好きだし。
染めに必要な自分好みの白生地を見に行けるし、海も好きだし、釣りも出来るし。

【花岡】昨夜頂いた小林さんの釣った白イカ最高に美味しかったです
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（小林氏と花岡社長の対談）